パナソニック製センサー、小ロット調達の壁
前回の記事から数週間。パナソニック製の高精度PIRセンサー「EKMB1107113」の調達状況を確認すると、残念ながらまだ入手の目処が立っていませんでした。
問い合わせてわかったのは、このセンサーは小ロットでの注文ができないということ。数台の試作機を作りたいというニーズには、なかなかマッチしません。
「今あるもので、できることを最大限やりましょう」
これが私たちの出した結論でした。そして、この判断が思わぬ進化につながることになります。
入場と退場、両方わかります
ある日、クライアント様からこんな質問をいただきました。
「今のシステムって、入場と退場を区別できますか?」

これまでのシステムは「通過人数」をカウントするだけでした。しかし施設管理者にとって本当に知りたいのは:
- 今、施設内に何人いるのか
- 朝の入場ラッシュは何時頃か
- 夕方、人が帰り始めるのは何時からか
これらを把握するには、入場と退場を区別して記録する必要があります。
そこで私たちは、2台のセンサーの配置を工夫することで、方向検出機能を実現しました。センサーの反応順序から、入場か退場かを自動判定。複数人が連続で通過しても、きちんとカウントできます。
ちなみに、940万円のPYRO EVOは標準構成では入退場の区別ができません。オプションで対応可能とのことですが、追加コストがかかります。
入退場を区別できる点では、私たちのシステムが一歩リードです。
スプレッドシートを開くだけで、すべてがわかる
Googleスプレッドシートとの連携機能も大幅に強化しました。
リアルタイムに近い状況把握
スプレッドシートを開けば、以下の情報が一目でわかります:
| 確認できること | 活用例 |
| 入場者数・退場者数 | 1日の利用状況を把握 |
| 現在の施設内人数 | 混雑状況の確認 |
| 最終入場・退場時刻 | システムの動作確認 |
| バッテリー残量 | メンテナンス時期の判断 |
自動集計で手間いらず
「データは溜まるけど、集計が大変…」という悩みを解決するため、自動集計機能を実装しました。
- 日次集計:日付ごとの入場数・退場数・合計
- 週次集計:曜日×時間帯のマトリックス(月ごとに別シート)
- 月次集計:年月ごとの推移一覧
「土日は平日の2倍」「午前10時がピーク」といった傾向が、集計表を見るだけでわかります。
現場に行かなくても設定変更
リモートパラメータ設定機能により、スプレッドシートから各種設定を変更できます。
- センサーの感度調整
- 入場方向の左右入れ替え
- データ送信時刻の変更
- カウンターの遠隔リセット
「設置してみたら左右が逆だった」という場合も、現場に行かずにスプレッドシートの設定を変えるだけ。運用の手間を大幅に削減できます。
3つのモードで、あらゆる環境に対応
設置環境は施設によって様々です。そこで、3つの動作モードを用意しました。
| モード | こんな場所に | 特徴 |
| TEST | 設置検証 | 検知するたびに即送信、音と光でフィードバック |
| ON_Grid | 電源・WiFiあり | 1日3回の自動送信、静音動作 |
| OFF_Grid | 電源・WiFiなし | ボタンを押したときだけ送信、最長バッテリー駆動 |
WiFiが届かない山奥の施設でも、定期的にスタッフが巡回してボタンを押すだけでデータを回収できます。
ケースを開けずに操作できる外部ボタン
屋外設置では防水ケースに入れる必要がありますが、操作のたびにケースを開けるのは面倒です。
そこで、外部ボタンの接続に対応しました。
- 外部ボタンを押す → 確認音(4秒)→ データ送信 → 完了音(4秒×3回)
音を聞くだけで「ちゃんと送信できた」とわかるので、画面を確認する必要がありません。雨の日でも、手袋をしていても、安心して操作できます。
電源が切れても、データは消えない
屋外運用で心配なのが、予期せぬ電源断。バッテリー切れやソーラーパネルの不調で、せっかく貯めたデータが消えてしまっては困ります。
私たちのシステムでは、カウントデータを不揮発性メモリに随時保存。電源が切れても、再起動すれば前回の続きからカウントを再開します。「今月のここまでの合計」が失われることはありません。
おわりに:「ちょうどいい」を一緒に作る
940万円の高機能システムと、数万円の簡易カウンター。
その間には、大きな空白がありました。
「本格的なシステムほどの機能は要らないけど、安価な製品では信頼性が足りない」
今回のプロジェクトは、まさにその空白を埋める挑戦です。
入場と退場を区別してカウントし、クラウドに自動集計する。リモートで設定を変更し、離れた場所から状況を把握する。これらの機能を、手の届く価格で実現することができました。

「でも、うちの施設は特殊な環境で…」
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
だからこそ、私たちは「汎用製品をそのまま売る」のではなく、お客様の環境に合わせてカスタマイズすることを大切にしています。検知範囲を調整したい、送信タイミングを変えたい、集計の形式を工夫したい。そうした細かなニーズに、柔軟に対応できるのが私たちの強みです。
信濃ロボティクスイノベーションズ合同会社は、長野県信濃町を拠点に「田舎テック」を掲げて活動しています。
「こんな場所でも使えますか?」 「うちの施設の課題、相談してもいいですか?」 「まずは試験的に導入してみたいんですが…」
どんな小さなご相談でも構いません。お気軽にお問い合わせください。
田舎の課題を、テクノロジーの力で、一緒に解決していきましょう。
次回は、実際の屋外設置事例と、運用開始後に見えてきた知見についてお伝えする予定です。お楽しみに。
